【最期の願い】
体のあちこちから赤い血が流れる。
致命的な傷は胸の刺し傷。
対立する勢力と戦い、そして…敗れた。
仲間もほぼ、壊滅的なこの戦場から離散している。
自分は残りわずかな命を痛みを堪えながら散り逝くのだろう。
もはや、赤い血は乾ききっている。
生命の源といえるものはすべて吐き出した。
意識ももうろうとしてきた。
力の入らない腕を動かし、壊れたペンダントを掴む。
フタを開けると、笑みを浮かべる自分と恋人を姿。
―必ず帰って来る―
そう約束した恋人も同じ組織に所属する同志だった。
せめて生き残ってほしい。
生き残って自分を忘れても構わない。
幸せになってほしい。
ただ、最期まで守ることができないのが心残りだった。
ごほごほ。
せきをする。
口の中に血の味が広がる。
だんだんと体が冷えてくるのがわかる。
―すまない。約束守れなさそう…だ―
誰でもいい。
神でも悪魔でも構わない。
自分の代わりにアイツを…。
目の端から一滴の涙がこぼれ、
シ…ンとした静寂があたりを包んだ。
完